トップページ | 文語おぼえちやう

助動詞便覧

活用表

種類 基本形 大意 未然 連用 終止 連体 已然 命令 接続
受身 受身・尊敬 るる るれ れよ 未然(四段・ナ変・ラ変)
らる 受身・尊敬 られ られ らる らるる らるれ られよ 未然(上記以外)
可能・自発 るる るれ 未然(四段・ナ変・ラ変)
らる 可能・自発 られ られ らる らるる らるれ 未然(上記以外)
使役 使役・尊敬 する すれ せよ 未然(四段・ナ変・ラ変)
さす 使役・尊敬 させ させ さす さする さすれ させよ 未然(上記以外)
しむ 使役・尊敬・丁寧 しめ しめ しむ しむる しむれ しめよ 未然
打消 打消 未然
ざり 打消 ざら ざり ざり ざる ざれ ざれ 未然
過去 過去 しか 連用
けり 過去・回想・詠嘆 けら けり ける けれ 連用
完了 完了・強意・並列 ぬる ぬれ (ね) 連用
完了・強意・並列 つる つれ (てよ) 連用
たり 完了・存続 たら たり たり たる たれ (たれ) 連用
継続・存続・完了 (ら) (り) (れ) (れ) 命令(四段)、未然(サ変)
推量 未来推量・意志 未然
らむ 現在推量 らむ らむ らめ 終止、ラ変は連体
けむ 過去推量 けむ けむ けめ 連用
らし 推量・確信 らし らし らし 終止、ラ変は連体
べし 推量・当然 べく べく べし べき べけれ 終止、ラ変は連体
べかり 推量・当然 べから べかり べかり べかる べかれ 終止、ラ変は連体
めり 推量 めり めり める めれ 終止、ラ変は連体
なり 推量・詠嘆 なり なり なる なれ 終止、ラ変は連体
まし 反実仮想・願望 (ませ) まし まし ましか 未然
まじ 打消推量・禁止 まじく まじく まじ まじき まじけれ 終止、ラ変は連体
打消推量・決意 未然
願望 たし 願望 たく たく たし たき たけれ 連用
まほし 願望・希望 まほしく まほしく まほし まほしき まほしけれ 未然
断定 なり 断定 なら なり なり なる なれ なれ 体言・用言の連体形
たり 断定 たら たり たり たる たれ たれ 体言
比況 ごとし 比況 ごとく ごとく ごとし ごとき 連体、助詞「が」「の」

受身・可能

らる
受身・尊敬
未然+【れ・れ・る・るる・るれ・れよ】
未然+【られ・られ・らる・らるる・らるれ・られよ】
(1)動詞の未然形に附く。 四段・ナ変・ラ変は「る」を用ひ、他は「らる」を用ふ。
(2)受身の意に於いて上代語「ゆ」に相当。
(3)「られ給ふ」などとして尊敬に用ふ。 使役助動詞を用ひ「させ給ふ」とは最高敬語となる。
らる
可能・自発
未然+【れ・れ・る・るる・るれ・○】
未然+【られ・られ・らる・らるる・らるれ・○】
(1)動詞の未然形に附く。 四段・ナ変・ラ変は「る」を用ひ、他は「らる」を用ふ。
(2)受身の意に於いて上代語「ゆ」に相当。
(3)自然とさなる様、さする事が可能なる様を表す。「自然ト…ト思ワレル」。
らゆ
受身・可能・自発
未然+【え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・○】
未然+【らえ・(らえ)・(らゆ)・(らゆる)・(らゆれ)・○】
(1)動詞の未然形に附く。 四段・ナ変・ラ変は「ゆ」を用ひ、他は「らゆ」を用ふ。

使役

さす
使役・尊敬
未然+【せ・せ・す・する・すれ・せよ】
未然+【させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ】
(1)動詞の未然形に附く。 四段・ナ変・ラ変は「す」を用ひ、他は「さす」を用ふ。
(2)通例助動詞には附かず。
しむ
使役・尊敬・丁寧
未然+【しめ・しめ・しむ・しむる・しむれ・しめよ】
(1)動詞・助動詞の未然形に附く。
(2)「得(え)」に附く場合「得せしむ」とも。

打消

打消
未然+【ず・ず・ず・ぬ・ね・○】
(1)動詞・助動詞の未然形に附く。 但し「つ」「ぬ」「せり」「ざり」「ず」を除く。
ざり
打消
未然+【ざら・ざり・(ざり)・ざる・ざれ・ざれ】
(1)用言の未然形に附く。
(2)「ず」+「あり」。

過去

過去
連用+【(せ)・○・き・し・しか・○】
(1)原則として動詞の連用形に附く。
(2)カ変ならば未然形にも「し」「しか」を続かる。
(3)サ変ならば未然形のみ「し」「しか」をば続かる。
(4)現代では連体形を終止形としても用ひらる。
(5)現代ではサ行四段動詞に附く時、 「暮らせし時」「過ごせしかば」などとする事が許容せらる。
けり
過去・回想・詠嘆
連用+【(けら)・○・けり・ける・けれ・○】
(1)活用語の連用形に附く。
(2)「き」+「あり」?
(3)おほよそ「き」は自身の直接経験しゝ事に用ひられ、 「けり」は他より伝聞しゝ事に用ひらるゝ傾向なり。

完了

完了・強意・並列
連用+【ね・ね・ぬ・ぬる・ぬれ・(ね)】
(1)動詞の連用語に附く。
(2)動作・作用・状態が確かに実現・発生しゝ事を表す。
(3)推量の「べし」「らむ」「む」に続きて推量に確認を含めさす。 単独でも意志を表す。
(4)「…ぬ…ぬ」と並立語としても用ふ。
完了・強意・並列
連用+【て・て・つ・つる・つれ・(てよ)】
(1)動詞・助動詞の連用記に附く。
(2)「ぬ」が無意志的なるに対し「つ」は意志的。
(3)「ぬ」が状態の存続を表す傾向、「つ」が動作の終結を示す傾向。
(4)「き」に比して現在に近き時点を表す。
(5)「つべし」などとして推量の強意。
(5)「…つ、…つ」と並立語としても用ふ。
たり
完了・存続
連用+【たら・たり・たり・たる・たれ・(たれ)】
(1)動詞・助動詞に附く。但しラ変動詞を除く。 助動詞は「る・らる」「す・さす」「しむ」「ぬ」らの連用形に附く。
(2)「て」+「あり」
(3)存続の意味は多く完了した後の状態を表す。
継続・存続・完了
【(ら)・(り)・り・る・(れ)・(れ)】
(1)四段動詞の命令(已然)形、サ変動詞の未然形に附く。
(2)四段動詞及びサ変動詞に「あり」の連なる形。 例へば「飛びあり」と「飛べり」。

推量

・ん
未来推量・意志
未然+【(ま)・○・む・む・め・○】
未然+【(ま)・○・ん・ん・め・○】
(1)活用語の未然形に附く。
(2)未来の事柄に関する推量に用ふ。
(3)過去の事柄ならば「けむ」を、現在の事柄ならば「らむ」を用ふ。
(4)「こそ…め」の係り結びや、完了の助動詞とゝもに「てむ」「なむ」の形で、 当然・適当との判断を表す。
(5)勧誘、命令の婉曲。「てむや」「なむや」。
(6)連体形を用ひて、断定を避くる婉曲・仮定。
らむ・らん
現在推量
終止+【○・○・らむ・らむ・らめ・○】
終止+【○・○・らん・らん・らめ・○】
(1)動詞・助動詞の終止形に附く。但しラ変の時は連体形に附く。
(2)原因・理由の不確かなる推量。原因推量・現在推量。
(3)確かなる時は「らし」を用ふ。
(4)視覚に基づくは「めり」を用ふ。
(5)多く連体形を用ひて、伝聞推量・婉曲。
けむ・けん
過去推量
連用+【(けま)・○・けむ・けむ・けめ・○】
連用+【(けま)・○・けん・けん・けめ・○】
(1)動詞・助動詞の連用形に附く。 形容詞型では「かり」、形容動詞型では「なり」の方に附く。
(2)「けり」+「む」?
(3)已然形は「ど」「ども」に附くが、「ば」には附かず。
らし
推量・確信
終止+【○・○・らし・{らし、らしき}・(らし)・○】
(1)動詞の終止形に附く。但しラ変の時は連体形に附く。
(2)「けり」に附く時は「けらし」、「なり」に附く時は「ならし」が普通。
(3)多く推定の根拠を示して、確かなる根拠・理由に基づく推量。
べしべかり
推量・当然
終止+【(べく)・べく・べし・べき・べけれ・○】
終止+【べから・べかり・(べかり)・べかる・(べかれ)・○】
(1)動詞の終止形に附く。但しラ変の時は連体形に附く。
(2)確実なる推量・予想。
(3)意志・決意。
(4)当然・適当。
(5)勧誘・命令。
(6)可能。
(7)連体形は「べかん」ともなる。 また「べかんめり」は「べかめり」と書く傾向。
めり
推量
終止+【○・めり・めり・める・めれ・○】
(1)動詞の終止形に附く。但しラ変の時は連体形に附く。
(2)「見あり」「見えあり」の変化?
(3)視覚に基づく推量。聴覚に基づくは「なり」を用ふ。
(4)不確かなる推量、婉曲。
なり
推量・詠嘆
終止+【○・なり・なり・なる・なれ・○】
(1)動詞の終止形に附く。但しラ変の時は連体形に附く。
(2)声・物音・気配より、その主体や状況を推定。
(3)伝聞、及び伝聞に基づく推定。
まし
反実仮想・願望
未然+【{ませ、ましか}・○・まし・まし・ましか・○】
(1)動詞・助動詞の未然形に附く。
(2)現実とは異なる推量。困惑。
(3)条件となる場合「ましば」と用ふ。 或いは単に動詞の未然形に「ば」を付ける。
(4)現実に対する不満、また意志・願望。
まじ
打消推量・禁止
終止+【まじく・まじく・まじ・まじき・まじけれ・○】
終止+【まじから・まじかり・まじ・まじかる・○・○】
(1)動詞・助動詞の終止形に附く。但しラ変は連体形に附く。
(2)「べし」の否定「べからず」に相当。
(3)打消の推量・予想・意志・決意。
(4)打消の当然、不適当。
(5)禁止、不可能の予測。
打消推量・決意
未然+【○・○・じ・じ・じ・○】
(1)動詞・助動詞の未然形に附く。
(2)「む」の否定に当たるが、用法は狭し。
(3)打消の推量・意志。

願望

たし
願望
連用+【たく・たく・たし・たき・たけれ・○】
連用+【たから・たかり・たし・たかる・たけれ・○】
(1)動詞・助動詞「す」「さす」「しむ」「る」「らる」などの連用形に附く。
(2)話し手の願望を表す。
(3)話し手以外の願望を表す(但し文末表現は稀)。
(4)連用形「たく」は「たう」と音便化する事も。
まほし
願望・希望
未然+【まほしく・まほしく・まほし・まほしき・まほしけれ・○】
未然+【まほしから・まほしかり・まほし・まほしかる・まほしけれ・○】
(1)動詞・助動詞「す」「さす」「しむ」「る」「らる」などの未然形に附く。
(2)「まく欲し」の変化。
(3)話し手・話し手以外の願望。
(4)「あらまほし」の形で、話し手以外の人への希望。

断定

なり
断定
体言・連体+【なら・なり・なり・なる・なれ・なれ】
(1)体言・用言の連体形に附く。
(2)「に」+「あり」
たり
断定
体言+【たら・たり・たり・たる・たれ・たれ】
(1)体言に附く
(2)「と」+「あり」

比況

ごとし
比況
【(ごとく)・ごとく・ごとし・ごとき・○・○】
(1)古くより動詞・助動詞の連体形に附くが、 後世は格助詞「が」「の」を介す。 はた体言に直接附く事も。
(2)比較して例へる。「年月は流れるゝごとし」
(3)例示す。「かくのごとき者」
(4)不確かなる断定。

制作・著作/香倉外骨  2003/03/13初出
無断転載を禁じます。リンクはご自由にどうぞ。
Copyright © 2003-2008 Kagura Gaikotsu. All rights reserved.