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ストリップとT氏の物語

清々しいまでのストリップ日和。ならば東洋ショーへ行くしかあるまいて。本日の香盤は、上野綾→清水愛→榎本らん→平野愛→真白希実。なかなかの充実っぷりじゃねえですか。一回目と二回目を通して見てきた。楽し過ぎ。やはりストリップは最高である。

各所で何度か見ている上野綾嬢、一回目「ELECT」、二回目「イニシエノウタ」ということで、相変わらず元気にダイナミックな動きを披露している。イニシエノウタはさすが魅せる。狐の仮面を持ちながらのリングはさすがだ。

清水まな嬢は圧倒的だな。一回目は和装、二回目はジャズな感じ。手の先端から足の指先まで、なめらかに、たおやかに、甘やかに制御され尽くされた舞、更に演技の幅も素晴らしい。

真白希実嬢、美しい肉体に目を奪われていてばかりではいけない。ダイナミックな動きにも目を奪われるしかない。舞台が小さく見えてしまうぐらいに縦横無尽に舞う。人気があるのも納得、是非また見たいものだ。

さて余り客のことを書くのはマナー違反と思いつゝ、まあ過疎の日記なので許されたい。つまりT氏のことである。Tとは当然ながら仮称で、というか名前も何も知らないけれど、会社の先輩のTさんに少し似ているので勝手にそう呼んでいる。

ストリップ歴一年にも満たないながら幾度かT氏を見かけている。初めて見たのはライブシアター栗橋だった。一見すると怖い感じの人っぽく、座っている雰囲気がなるほど地元のやーさん、目を合わしたらいかんと思わせるものがあった。開演すれば手拍子、その仕草も堂に入っていて玄人っぽい。嬢も他の客も知ったる客という風で、こりゃ本物なんじゃないかと。

かゝれど香盤が進むに連れて、T氏の本質を垣間見ることができてきた。まず毎回ポラを撮る。嬢にイジられる。ツーショットだと撮るのを頼まれ快く引き受ける。そして嬢にイジられる。気前よくチップを払えば、またイジられる。こ、これは、

本物だ。本物のストリップ好きなんだ。その立ち振る舞い、ストリップの道をひたすら突き進む修行僧に違いない。

なぜならその後も幾度となくT氏を見かけたのである。寧ろ劇場に足を運んだ半分以上で見かけた。余とて劇場はその都度違うのにそこに居る。単によく劇場に行くだけでは会えないはず。なぜか居て、なぜか目立っていて、なぜか皆を楽しい気持ちにさせる。素晴らしい。さすがその道のプロ。須くストリップを愛し、悉くストリッパーを見守る。別け隔てなく、まるで神か仏か、T氏の慈愛は全ての嬢に、その劇場の観客からスタッフにまで注がれる。彼にとって舞姫は常に平等に光り輝いているのだろう。

そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

今日の東洋ショーでそうではないことを知った。嗚呼、清水愛こそT氏の心の中心に居る。清水愛のTシャツを着て、明らかにいつもよりポラの枚数が多い。極めつけに終演の際「日本一」と叫んだ。日本一。二番でも三番でもない、一番なのだと。嬢は平等ではない、順番があり、順番があれば一番がいる。そして清水愛が一番であると、高らかに宣言したのである。

余の脳髄に衝撃が走った。彼は、神でも仏でもなく、人間であった。清水愛に心を奪われたファンの一人でしかなかった。

けれどそれと同時に、更に彼の崇高さに思いを馳せることになる。即ちストリップ道を歩む僧でないとすれば、どれほど慈愛に満ちているというのであろう。確かに清水愛は特別かも知れない。けれどやはり他の嬢に注がれるまな差しは本物で、観客とスタッフに注がれた光は真実である。

やはり彼は本物だ。


制作・著作/香倉外骨  2018/07/30初出
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