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踊る妖精

電車に乗り上野へ。荷物は駅のロッカーへ収納し、道に迷いながら上野公園の南側へと歩いていく。思ったより時間が押したので、コンビニで酒を買ってからシアター上野へ。

初めてのシアター上野。事前情報でかなり小さいと知っていたが、なるほど店構えからしてなかなかの雰囲気である。細長い雑居ビル、この外見からだけでもその狭さが容易に想像せらるゝを、更に地下へ伸びる階段にその文字通りアンダーグラウンドな雰囲気がぷんぷん香ばしく匂ってくる。

その先に何が待っているのか、期待と不安にさいなまれながら階段を降りれば、そこに受付がある。料金を支払えば目当てはと尋ねられる。とりあえず御幸奈々ちゃんと応える。奈々ちゃんね、という何とも云えない返事。何だよ、この雰囲気。平成も終わろうとしているのに、こゝは完全に昭和である。もう既にかなり楽しくなってきた。

奥にある暖簾のれんをくゞる。おゝ、狭い。幅は四メートルほどであろうか。正面に舞台があり、そこから短い花道、回転しない盆がある。周辺に駅のベンチのような硬い椅子が並んでいる。かぶりの正面向きから四席の三列、後は両壁に沿って十席ずつほど。開演前だが二十人ほどの来客であろうか、空き席もあるけれど、狭さ故にぎゅうぎゅうに感じてしまう。もちろん天井が低い。ミラーボールもあるけれど、真ん中では邪魔になるから端に寄せられている。確かにストリップ小屋と称すべきだわ。

そんなシアター上野の今日の香盤は、三枝美憂→相田樹音→葉月凛→山口桃華→御幸奈々。なかなか平均年齢の高いメンバーとなっている。

一番手、三枝美憂嬢、初見である。なかなか面白い選曲だが、いかんせん動きが硬いかなあ。照明設備も最小限である。終わるとポラタイム。デジカメ方式で一枚五百円。舞台下手(左側)に列を作ることになるが、列を作る程の場所もないぐらい狭い。お互い譲りながら撮影する。撮影が終わると近くの客にデジカメを受付へ持っていってもらう。いわばセミセルフ方式。オープンショーで終わり。

二番手、相田樹音嬢、この方も初見。なかなかのベテラン具合でプレゼント攻勢を仕掛けてくる。完全にクリスマス演目。途中で新体操のリボンを活用する。初めてみる小道具だけれど、ダイナミックで美しくてなかなかいゝ。回転しない盆だと自分で回らないと駄目だから大変そう。けれど壁に手を伸ばしたりと、狭いのを活かした動きを見ることができる。

三番手、葉月凛嬢、またまた初見。これまでの高齢具合に見慣れてしまうと若く見えるけれど、それでもデビュー十年選手。なかなか面白い演目で、箸休めと云えば失礼かも知れないけれど、ちょっと目先を変えることができて良い。

四番手、山口桃華嬢は、先月の広島以来で、この方も訪問の目的の一つ。やっぱり楽しい演目が続く三個出し。タンバリンが響く。楽しい。高齢のリボンさんがリボンを飛ばす。飛ばせるほどの距離もないけれど。

トリの五番手、御幸奈々嬢。夏の栗橋以来であるが、相変わらずのキレキレの激しい舞を披露。ともかく勢いが凄い。そして可愛い。さすがの切れ味で完全に魅了される。ベットショーで高齢リボンさんのリボンが奈々嬢に落ちる。浅草だったらつまみ出されるような大失態である。しかし奈々様は動じずに寧ろリボンを持ったまゝ踊り、立ち上がりもリボンを回しながら締めくゝる。これがデビュー二十七周年を超える実力か。心が打たれた。

毎回フィナーレがあって、その後に集合写真千円やビール販売などのコーナーが有る。トイレが一つしかないので早め早めの用足しが望まれる。

こんなふうに素晴らしい時間を過ごしていると、いつのまにか早くも四回目。もう客は一桁しか居ない。しかも寒い。震えながらラストまで観劇する。

上野、素晴らしく楽しい街。


制作・著作/香倉外骨  2018/12/27初出
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