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筋肉は裏切らない

朝、いそいそと車を走らせて。

一時前ぐらいに到着。腹ごしらえをし、コンビニにて兵站を整えてから目的地へと向かう。この時世、たかだかいつもの劇場に行くだけでも、不安と、恐れにがある。主としてこの恐れとは、同調圧力に対してゞあるが。

開始十分前、入場。場内は二十人に足りないぐらいか。これまで見た中では一番少ない。それでも最初の踊り子さんが今日はめちゃめちゃ多いと云っていたから、平日は本当に少ないのだろう。この状況、今日見なかったら、もう見れないかも知れない。ひとたび失われたものは、ふたゝび戻ることはない。

客席のマスク装着率は百パーセントの中で開演を迎える。基本的にポラは消毒してから。ツーショットでもマスク着用、握手なし。さながらサイバーパンクの世界。

本日の香盤は、翔田真央→安田志穂→沢村れいか→鈴木千里。なお、二回目と四回目は、れいか嬢、千里嬢、両名によるチームショー「M2S」である。進行はバラシ進行。それでも時間に余裕あり。三回目終わりのみフィナーレ、集合ポラあり。各回終了後、非常口を開放して換気する。

一番、翔田真央嬢。初見。一回目、ドロンジョ? 初めて見るのでキャラを読めず、トップなので心も助走できておらず、ぽかんと見てしまった。ポラ時間余ったからと唐突にけん玉。何かどっかで見たノリかも知れない。二回目はオリンピックをテーマにした演目で、ブレザー、チア、ドレスと楽しませてくれる。現実は延期されたけれど、こゝには確かにスポーツの祭典があった。三回目「鶴の恩返し」は、三味線の音色に包まれ、ふすまの向こうで羽が舞う。嗚呼、美しい。美しも物哀しい演目である。四回目、女子高生。盆から始まり、ブレザーの制服を着る。ルーズソックをのりを塗って履く。あゝ、懐かしい。ちょうど突き刺さる。選曲がまたこれ、突き刺さる。そうそう、携帯はアンテナを伸ばす必要があったな。凄くいゝ。色んな思いが心に浮かんで、涙が浮かぶ。凄くいゝ。ルーズソックスは、凄くいゝ。

二番、安田志穂嬢。先週の小倉以来二度目。激しくも優美で、ダイナミックなダンスを踊る。それでいて大人の色香が漂う。素晴らしい。一回目は昭和歌謡にあふれる演目で、表情に見入ってしまう。二回目はカーニバルのようなノリで始まったと思ったら、リングを使ったエアリアル。無駄のない洗練された動き。素晴らしい。ベットも流れるようにいつの間にかポーズが切られては次へと続く。三回目はハッピーバースデーで始まる。バケツやらポテチのリボン。マリリン・モンローからカツラをとって素に戻る。よくできている。四回目、ステッキを持ってマジシャン風。これまたレベルが高い。

三番、沢村れいか嬢。記録によれば川崎で見ているようだが、よく覚えていないので実質初見。一回目、ドレスからボンテージへと着替えて。激しくノリノリの演目。いゝ動きをする。なるほど、これは良い。三回目、帽子をかぶってのかっこいゝ演目。EDM風の洋楽でゴリゴリ踊る。これはテンション上がる。

四番、鈴木千里嬢。一回目と三回目、十一周年。始まるときの右手を斜め下へ三回振り下ろす。この動きが凄く好き。目を細める表情に引き込まれる。相変わらずの素晴らしさである。照明の所為か、真っ白い金髪がピンク掛かって見える、と思ったら、どうもピンクに染めたようだ。春らしい。

二回目、四回目、鈴木千里嬢と沢村れいか嬢によるチームショー「TEAM M2S」は、三十八分の至高の時間。チーム新作。まずは白いドレスの千里嬢、黒いタキシードのれいか嬢が登場。二人が美しく、麗しく、楽しそうに踊る。その舞はこの世の喜びであり、共にあることへの感謝の如し。千里嬢のドレス姿はさながら神様のようであり、女神の微笑みに、畏敬にも似た歓喜に打ち震え、思わず涙を流れてしまう。白いドレスに腕から羽根が垂れて、妖精のようにステージを駆け巡る。

とキレキレで美しい二人の舞踊が続くと思いきや、いきなりジャージ姿の二人が登場。超展開で筋肉マッスルで腹筋を始めて、こちらの腹筋も抱腹絶倒の崩壊寸前に。何だこりゃ。意表というか意味不明というか、もう、最高である。その後、再びシリアスに。今度はれいか嬢が白いドレスで舞う。聞き慣れた曲、見慣れた振り。幾度も見た千里嬢ではなく、れいか嬢が舞う。力強く正確に、かっこよく踊るそれは、違う味付けでいゝ。その後でキャップをかぶった千里嬢が登場する。可愛い。帽子をかぶると、しろがねの髪の間から耳が出る。凄く可愛い。女神、妖精ときて、次はエルフの如し。最後は二人で連続してポーズを切りまくる。上手、下手から、リボンが舞う。背中を合わせ、立ち上がる二人。至高の時間もお開きとなる。

控えめに云って最高のチームショー。贅沢を云えば東洋で見たい。広い東洋でこそ、より映えるに違いなかろうて。

もし明日、死ぬことがあったとしたら、最後に見たのがこの演目であったことに、この二人に会えたことに、感謝したい。


制作・著作/香倉外骨  2020/08/10初出
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