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グラン・ヴァカンス

四時半に目覚ましをセットしていたけれど、いったん三時前に目が覚めてしまう。寝不足だとしんどいけれど、目が冴えてしまってもはや二度寝できぬと悟って、ならばいっそこのまゝ出発することにする。

午前三時半、早朝というよりは深夜、車に乗り込み、いざ出陣。

京奈和、名阪国道を経由して、東名阪まで来たところで、ようやく白み始める。いよいよ夜明けは近いけれど、やはり少々眠気に誘われたので、二十分ほど仮眠。それから再出発。伊勢湾岸、新東名、東名と快調に走り続けて、目立った渋滞なく東京インターへと至る。

タイムズに車を停めたのが十一時前ぐらい。変則的だがこゝから電車移動とする。用賀駅から東急田園都市線に乗って渋谷まで。しかし暑い。マスクの中が汗まみれ。ちょっとやそっとの水分補給は簡単に汗になってしまう。

渋谷駅構内。その端で暑さに耐えながら立つ男は、右手にスマートフォンを横画面にして持っていた。画面に映し出されるはグリーンチャンネルの競馬中継である。

札幌競馬の第四レース。芝千五百メートル、牝馬限定の未勝利戦。デュアルネイチャーは転厩しての初戦であるが、もう未勝利戦に後がないし、そろそろ勝ち上がらないといけないけれど、これまでの成績は今一つ。初めての洋芝。こゝらで変わり身を期待したいというか、背水の陣とも云えよう。

フルゲート十四頭立ての六枠十番。鞍上は田辺裕信騎手。体重は二キロ増の四百三十六キロ。単勝では九番人気。

十一時二十五分、発馬。少しよれたスタートで、後方からの競馬となる。この時点ではあんまりいゝように見えない。後方のまゝ向こう正面を進む。三コーナーに入った辺りでは最後方となってそのまゝ沈むかと思ってしまった。

しかし直線に向いて大外に出す。札幌の直線は短いけれど、どんどん追い込みを掛けて、ごぼう抜き。このまゝ差し切ると思いきや、僅かに及ばず二着。ハナ差ぐらい? JRAの結果表では四分の三馬身ってなっているけど、気持ち的にはハナ差ですわ、こりゃ。思わず渋谷駅で叫んでしまった。小声だったとは思うけれど。

尤も二着は二着。一着にならなければ未勝利であることに違いはない。次に期待したい。次、あるよね?

さてと興奮冷めやらぬまゝ、山手線に乗って新宿へと向かう。ラーメンを食ってから新宿ニューアートへ。三回公演と短縮営業のため、十二時半の開場。開場五分前に到着。五千円を払って入場する。今はコロナの影響によりリボン禁止らしい。ついでに場内での飲酒も禁止になっていた。なので買ってきたビールは諦めて、開演の一時半まで外出して時間を潰す。ちなみにロビーでは飲んでもいゝようなので、撮影タイムごとにロビーに出て酒をちびちび飲むことにする。

そんな新宿ニューアート、本日の香盤は、香山蘭→藤咲茉莉花→藤川菜緒→浜野蘭→沢村れいか→鈴木千里。三回公演である。一回目と三回目は、沢村れいかと鈴木千里によるチームショー「M2S」。一回目から三回目までプンラス。進行は、一回目はバラシ、二回目と三回目はダブル。予定どおり午後十時終演。

このメンバー、素晴らしい。豪華すぎる香盤である。

一番、香山蘭嬢。連作「反戦歌」三部作。一回目から三回目にかけて順に。二年前の夏に東洋にて第三部を見た。その時は何の予備知識もなく、その感想として次のように書いた。

「赤玉の瓶を持って千鳥足で登場。昭和初期の設定であろうか、飲みながら街頭をふらつき、男を誘って体を売る。もうこれだけで物語になっている。鞄から日除けの垂れた軍帽。なるほど戦後(或いは戦中)の設定か。彼女は軍帽に匂いを嗅ぎ、胸にいだき、泣きながら自慰をする。いたゝまれない。うるうる涙が出てきた。もうちょっとで泣きそう。手を伸ばせば届く距離に裸体があるのに、ちっとも性的には興奮しない。美しいのに、心が締め付けられる……。」

初めて最初から見ることができた。幸せな日々、戦争の酷さ、失う物の大きさ、そしてそれでも生きる人の強さ。色々な思いが溢れている。割と激しいオナベを、こんなにも涙でにじんだ先に見ることになるとは。素晴らしい作品であった。

二番、藤咲茉莉花嬢。白鳥の湖の演目は何度か目にしたけれど、この白い羽扇子が白鳥の翼を表していると、今更ながら気づく。本当に今更だけど、翼がもがれて苦しみ、黒い鳥となっても力強く羽ばたき、かくして黒い羽を大きく広げる。白よりも美しく強い黒。心にしみるステージ。こんなにも深い作品だったのか。

三番、藤川菜緒嬢。七結東洋からの連続となる。三個出し。三回目が例の扇子演目「ジュリアナ忍者」である。このノリノリ、やっぱり盛り上がる。ベットも常にノリノリ。小さな体で大きく見せる。

四番、浜野蘭嬢。三個出し。二回目「タマミツネ」は勢いのある激しい演目。これでもか、これでもかと踊り倒す。これは凄い。こういう踊る喜びに満ちたステージ、好きだなあ。

そういえば、とある客の話なるけれど、足の裏が好きな方が居て、こっそり注目してしまった。撮影タイムもひたすら足の裏。誰彼構わず足の裏。ベットショーでも局部より足の動きに反応している。踊り子さんも分かっていて、オープンショーでは皆が足の裏を見せる。何か微笑ましく思う。

閑話休題。五番、沢村れいか嬢。二回目は祭り装束で登場。お祭り騒ぎ。途中から沖縄ふうの祭りになって躍動感に溢れて盛り上がる。

六番、鈴木千里嬢。二回目が十一周年作。何度も何度も見た演目。千里嬢の演目はどれも素晴らしいけど、本当にこれは素晴らしい。まあ照明は、東洋のそれがずば抜けていたなあ。

一回目と三回目は、沢村れいか嬢と鈴木千里嬢によるチームショー「M2S」である。広島で見たのが四月四日。今日は八月八日。これは次は十二月十二日に見ないといけなさそうな流れ。十二中はどこかの劇場でチームショーを是非。

れいか嬢が黒いタキシード、千里嬢が白いドレスで登場。信頼し合う二人、視線を交叉させながら綺麗に格好良く舞う。二人揃ってのベット。二人が流れるようにポーズを切る。尊い。

打って変わってマッスルタイム。ジャージ姿がかっこよくて可愛い。一気に楽しくなる。がちがちに腹筋した後、それぞれのソロを挟む。れいか嬢は千里嬢の演目からの借用。懐かしい。千里嬢はキャップをかぶって。帽子を被ると銀色の髪の間から両耳がちょこっと出る。これがすごく可愛い。うん、もっと帽子を被って欲しい。

再び二人揃ってベットへ。二人揃ってポーズを切る。楽しそうに、幸せそうに。背中を合わせて立ち上がる所まで、完璧な世界が構築されている。

オープンショーではれいか嬢がお尻を叩かれまくり。でイチャイチャしまくり。うーん、楽しい。これは本当に必見のチームショーである。


制作・著作/香倉外骨  2020/09/08初出
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