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夢の上

昨夜は、ちと飲みすぎた。にも関わらず目覚ましより先に目覚める自分を褒めたい。喉が渇いた。二日酔いにすらなっていない。まだ酔っているのかも知れない。

ともかく空港へ向かわねばならん。それが我が道、ストの道。たといそれが茨の道だとしても。

順調に空港に着いたが、やはり今になって頭が痛くなってきた。いよいよ二日酔いのゾーンに侵入してきたと思われる。まだ一時間ほど時間があるが、さっさと保安検査場を抜ける。QRコードをかざすと検査証が出てきて座席変更を告げられる。何でも機材変更のためらしい。うひゃあ。行きは別件のHさんと敢えて同じ便にしたのに、こりゃ席がバラバラになるな。別で予約したから仕方ないとは云え……。

コロナ対策の一貫か、分散してどんどん早めに機内へと進む。やがて登場するHさんとは勿論離れた席に。やむなし。尤も二日酔いで休憩するにはよい時間であった、と思う暇もなく羽田空港が近づいてくる。実質五十分ぐらいで着陸。めちゃくちゃ早い。予定よりも早い。何この爆速。飛行機の本気を見た。ちなみにこれが人生初の羽田空港である。

昼まではHさんと少しばかり行動。微妙な時間なので豊洲に行ってみる。よく分からんが寿司屋に行ってみる。よく分からんがその場で予約してみる。実はけっこうな高級店だった模様。旅ならば良かろう。昼から豪華な寿司を食う。旨い。やっぱ昼から寿司にビール、これこそ旅の醍醐味だね。

二日酔い? あ、まあ、それは、えゝ。旨かったですよ。

Hさんと別れて、独り浅草へと向かう。そうである。今回の遠征の目的の一つはこゝ、鈴木千里嬢の出演される浅草ロック座にほかならぬ。荷物は六区交番近くのコインロッカーに預け、控えめにローソンで酒を調達し、ぼちくら開演十数分ほど前に入場する。ほゝう。なかなかの客入り。満席に近い。女性客もかなり多いぞ。

浅草ロック座「DREAM ON 2nd season」出演は、鈴木千里→鈴香音色→宇野莉緒→赤西涼→君島みお→高崎美佳→武藤つぐみ→君島みお。四回公演。一回目から最後まで。いわゆるプンラスである。一回目は満席であったが、その後に一気に人が引いて、どんどん人が減っていく。最終回の割引後入場もあまりおらず、コロナの影響かと思われる。各回の間で換気をするので、非常口の近くは非常に寒くなる。

一景、鈴木千里。高崎、宇野、ダンサー四名を伴って。船長の鈴木さんは相変わらずかっこいゝ。この帽子をかぶって耳がぴょこっと出るのが可愛いのです。かっこよさと可愛さが同居。遠くの方を目を細めて見る仕草が渋い。あゝ、こりゃ美しい。凄くいゝ景。宇野さんの元気な姿と、冷冽とした鈴木さんとの対比がいゝ。

二景、鈴香音色。不思議なオブジェが背景に登場。その前にある繭が動く。あゝ、誕生のとき。やがて鈴香さんが出てくる。長い長いヒールで観客を夢の世界へと誘う。あ、四景では少し短いヒールになってた。

三景、宇野莉緒。赤西涼、ダンサー二名を伴って。そうか、つり革がありゃ、そこは電車の中。照明の演出も相まって、見事にそれは終電を表している。めちゃめちゃ可愛い宇野さん、そして昭和のOL姿の赤西さんがいゝ味を出しているのは勿論、ダンサー二名も自由に奔放にアドリブ込みで面白い。これは楽しい。そして最後は全裸で踊りまくる宇野さんが眩しすぎる。

四景、赤西涼。鈴木、鈴香、武藤、高崎、そしてダンサー二名と豪華な出演。ドレスを着た赤西さんを中心に五人が愉快に踊る。遅れて渋い男装姿で武藤さんが登場。武藤さんは表情を含めて多彩に動く。ダンスと言うよりも舞台。四回目で武藤さんが赤西さんに一輪の赤い花を渡す。それを受け取り、そっと置いてベットへ。立ち上がりから再び赤い花を掲げて終わる。あまりに自然な流れだったので、これまでの記憶にないとは思いつゝ、見落としていたのかと思ったら、これは四回目だけの武藤さんのアドリブだったようで。

中休憩を挟んで、

五景、君島みお。右にキセルを置いて、豪奢な寝床、中央にそっと君島さんが堂々とある。花魁。短い景ながらすっと世界に取り込まれる。ベットはなし。布団があるし、ある意味そこがベットか。

六景、高崎美佳。君島、鈴木、鈴香、武藤を伴って。中央に大きなクマ。そしてゴスロリ姿の高崎さん。それぞれにインパクトの強い衣装。まるで別世界に吹き飛ばされたようで。移動盆で黒い口紅を指す高崎さん。一気に高崎さんの世界になる。

七景、武藤つぐみ。ハンモックが美しい。すっぽり入ってすやすやに眠るようにありながら、ときに激しく遊ぶように空中を弄ぶ。武藤さんを初めて見たのは二年ほど前の東洋である。たゞひたすら白い布を持ってくるくる回る演目に度肝を抜かれた。初対面の印象が強すぎて、コンテンポラリーのイメージだけれど、確かに実に多彩で。この景に限らず、随所で伸び伸びとかっこいゝダンスに、こりゃ凄いなと魅せられる。

八景、君島みお。赤西、宇野、ダンサー四名を伴って。ステージいっぱいが赤。赤。その中でうごめく赤い人々。独特の舞で恐ろしくも美しい世界が創られる。画面いっぱい真っ赤の中で踊る赤西涼さんが、それはもう綺麗で神々しくて、目が釘付けに。この八景の、衣装と舞台の融合を考えた人には、感嘆せざるを得ない。振付も素晴らしく、演出も凝っている。これでもかと詰め込まれた演出に圧倒されるしか無い。

多彩で深みがあり、そして楽しい。素晴らしい公演であった。浅草は鑑賞回数が限られるが、間違いなくこれまで見た中では一番と云える。

大入りが出たようだが、確かに一回目は満席、しかし四回目は寂しい状況で、集客的には厳しいご時世になったものである。なるほど十時二十分の終演。これでもコロナ前に比べたら早い終わりだが、既に飲み屋も閉まっている店が多く、人通りもまばらになっている。何とも寂しい。さながら世紀末ではないか。

それでも香倉外骨は今日もストリップを愛し、明日もストリップを見て、日々ストリップに魅せられるのである。


制作・著作/香倉外骨  2020/12/29初出
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