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十二周年

心地よい晴れた空の下、ゆっくりと散策しつゝ、朝から検索したラーメン屋を目指す。十時から開いてるラーメン屋は少ないのでと思ってやってきたが店の前に張り紙。当面は十一時開店と書かれていた。ふむ。別のチェーン店でつけ麺を食うことにする。一日分のカロリーを補給するため大盛りを食う。腹いっぱい。

開場は十一時である。少しばかり早いが早めに行こう。十分前に到着。既に歩道まで伸びていた列に並ぶ。開場前から並ぶなんてことはめったにしない。こゝでは初めてゞあるけれど、なかなか開放的な場所。駅からすぐの大通り沿い、道行く人も多く、さすがに家族連れなどがこっちを見てくるのは内心恥ずかしい。客観的に見たら、朝っぱらからストリップに並んでるおっさんだからな。はい、今日も元気です。

横浜ロック座、本日の香盤は、西園寺瞳→早瀬ありす→沢村れいか→翼裕香→鈴木千里。たゞし二回目と四回目は、西園寺瞳→早瀬ありす→翼裕香→TEAM M2S(沢村れいか、鈴木千里)と変則的になっている。プンラス。進行は、一回目通常、二回目2−1−チーム、三回目2−2−1、四回目2−1−チーム。各回フィナーレ後に合ポラあり。

横浜の舞台は小さい。この凝縮された感じも嫌いじゃないし、そりゃシアター上野とかに比べたら充分に広いとも言える。だけどね、本舞台の奥行きがもう少しばかり長かったら、もっとのびのびとしたステージが見れるのに、と思ってしまう。もうちょっとだけでもと。

あと背景が白い。黒い劇場が多いけれどこゝは白い。でも近くで踊っている影が映る。影と一緒に踊っているようで、これはこれで悪くなく、ふとした瞬間にその輪郭に見とれてしまう。

一番、西園寺瞳嬢。一回目「月のしずく」は妖精のように優しく美しいイメージ。二回目と四回目は「ハロウィンパーティー」。三回目「地球」は地球儀のようなボールを持って。ふとアメノウズメが現れたような心持ちになる。

二番、早瀬ありす嬢は、ブレザーの制服で登場。真っ赤な春コートが眩しい。ビニール傘をくるくる回して可愛い。そんな一回目と三回目に対して、二回目と四回目は打って変わって和装で登場。いのち短しと和傘を回す。心の入ったステージだ。

三番、沢村れいか嬢。一回目と三回目は和装の演目。ステージ中央、妖しくも綺麗に光る月が据えられている。手に掲げてたおやかに舞う。美しい。沢村さんってこういうステージもするのですね。勝手に感心する。

四番、翼裕香嬢。一回目と三回目、「春夏秋冬」は一番綺麗な私をな和服の演目。扇子をかざし、かんざしを載せて、そして長い黒髪が何よりも心に残る。ゆるやかにしなやかに、じっくりとしっかりと、そして美しく。魅せられる。

対して二回目と四回目は激しくポップなぱみゅぱみゅなステージ。薄く青いショートのウィッグをして全く雰囲気が違う。これは鈴木千里さんの演目らしいが初めて見る。というか鈴木さんのこういう演目を見たことないので、ちょっとそれはそれで見たい気がする。この後のオープンでは初音ミクが流れる。懐かしい曲に色んな思いが溢れてきて、ふと涙がこみ上げてくる。何だろうな、この気持ちは。地味な風合いの裾の長いハッピ、背には大きく翼裕香。ちょうど翼の文字の所から羽根が生えている。それがまるで本物の翼のように見えて、このまゝ空へと飛んでいくかのように思えた__。

それに比べてポラでの喋り方よ。ありがとぽよって、語尾ぽよって。萌え殺す気か。

五番、鈴木千里嬢。今週でデビュー十二周年。一回目、初めて見る演目。つまり十二周年作ということか。洋楽で渋くごりごり押していく感じ。ありそうでなかった感じ。かっこいゝ。凄い。三回目にじっくり見直そうと思った。

その三回目は先週東洋で見た「宿儺の手綱」である(勝手名付け)。けだし十二周年作は二つあると考えるべきであろうか。一回目のものが表とすれば三回目は裏。陽と陰、白と黒、光と闇、喜びと不安、洗練と解放。見事な対比がそこに佇んでいる。東洋より狭いステージで当たり前のように連続してターンする。たゞ口を開けて見上げるばかり。切なくも美しく、か弱くも力強い。

鈴木千里さんのステージは僅かな所作まで完成されていて、それでいてふと人間らしい視線や表情を垣間見せる。余りに完璧で、これ以上のものはもうないと思うのに、見るたびに更に上の世界へと連れて行かれる。心が、満たされる。

日頃の感謝の気持ちを込めて、十二周年おめでとうございますと祝いの言葉を口にする。文字では色々と書き連ねているくせに、人見知りで口下手で緊張して、いつも言いたいことの微塵も言えず、単に素晴らしいとしか言っていない。言わなければ伝わらないとしても、そのステージからいつもこの身に降りそゝがれる感動は確かにあって、その感動に今日こそ返礼せねばなるまい。この場を借りて感謝の言葉を。

「鈴木千里さん、十二周年おめでとうございます。十三年目のステージ、引き続き素敵な姿が見れますことを祈念しております」

今日ばかりは周年Tシャツを着る。普段こういうのを着ることはない。というか人生初である。そこかしこで同じTシャツを着ている。うん、このシャツいゝね。普段からも着れそうな気がする。

各回終了後のフィナーレ。自由な展開。だいたい被害者は早瀬ありす嬢で、だいたい加害者は鈴木千里嬢で、見ていて楽しい。二回目フィナーレ時、そっと鈴木千里さんにお祝いの言葉。

二回目と四回目は沢村れいか&鈴木千里チームショー「M2S」。見事な切れ味の二人が、がっちり息を合わせて、練られた展開、途中の楽しいマッスルコーナー、そして二人のベットで見つめ合う二人、千里さんがベットで朗らかな笑顔を見せるのが珍しくこれもまた魅力的で、この特別な日にふさわしい特別なチームショーは、そのオープンでの自由さも相まって、最高の仕上がり。最高潮の中で今日を終える。


制作・著作/香倉外骨  2021/02/06初出
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