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桜木町

桜木町駅はその昔、横浜駅という名前であった。その名の通り今も横浜の中心地。今の横浜駅はかつて沼地であって、埋め立てと東海道線の延長の関係で横浜駅になったという。かくして旧横浜駅は桜木町駅となった。

そんなことはどうでもいゝ。今日はじっくりゆっくり寝るつもりであった。何てったって今日は一日横浜ロック座に籠もるつもりなのだから。なのになぜかきっちり七時に目が覚めてしまった。いつからかような健全な体になっちまったんだろう。年老いるとはこういうことなのか。

やむなく朝から大浴場に行く。誰も居ない。それほど大きくはなく、少し古びているけれど、きっちり足を伸ばせる浴場を独り占め。贅沢である。浴槽から出ようとして足を滑らせて焦る。こんなことに焦るなんて。年老いるとはこういうことなのか。

九時前にホテルを出ることに。せっかくなので散策しよう。横浜は何度か来ているけれど飲み屋ぐらいしか見ていない。たまには観光らしいことをしてもいゝんじゃないか。

ということで駅を越えて海側へ行ってみる。汽車道という海の上の通路があって、けっこう人通りの多い通用路で普通に皆が歩いている。地面を見ると線路のように二条の鉄路が埋まっている。その昔はこゝは本当に汽車道であったという。かの時代の橋がそのまゝ残されていてAMERICAN BRIDGE COMPANYの銘が刻まれている。百年以上前に同社が製造したものが今も使われているのである。

何気ない風景に見とれつゝ、まだまだ暑い日差しに少しばかりの疲労を感じ、ふと見つけたファミリーマートにて角ハイボール濃いめを買ってしまう。近頃ビール党からハイボール党に移りつゝある気がする。とりあえず散策は終了、海を眺めながらハイボールを呑む。皆が働いているであろう金曜。こりゃ幸せだ。でも今日はプレミアムフライデー。悪くない。

腹ごしらえをしてからの十一時半過ぎ、目的の横浜ロック座へ。思ったより空いている。最前列に座れてしまった。よし、今日は堪能してやろう。背もたれなんか不要だ。意気や良し。

かくして本日の香盤は、西園寺瞳→前田あこ→武藤つぐみ→鈴木千里→原美織。特に押すこともなく、各回終了後に休憩が入るぐらいゆったり進行。一回目から三回目まではフィナーレと合ポラがある。久々に完全プンラス。キメてしまった。

一番、西園寺瞳嬢。最初の最初、盆から始まる演目なのに曲が間違っていたようでいったん慌てゝ引っ込む。そのときのリアクションがまたかわいゝ。さすがひとみたん。一回目はハロウィーンな演目。二回目と三回目はマジシャンというか手品をする演目だが……何とも緩い感じでひとみワールド全開。三回目は本能寺的な。

二番、前田あこ嬢。一回目と三回目はあこ飯店。肉まん配達のコメディタッチ、中華風でごりごりくる。いやこれは楽しい。なんかストリップって楽しいですねってことを思い出させてくれる。二回目と四回目はライオンにムチを振ることができず。これまた楽しくて楽しい。いゝねえ。

三番、武藤つぐみ嬢。久しぶりに見る気がする。初めて武藤さんを見たのは三年ほど前であろうか。薄暗い東洋のステージで、白い布を持ってたゞひたすらに回転し続けるという演目であった。その余りの尖りっぷり、先鋭さに度肝を抜かれ、今も深く心に刻まれている。確かに美しかった。

一回目、赤いドレスを着ている。白ではない。白とはまるで対象的な鮮烈な赤でくるくると回転を始める。たゞひたすらに。されど今日はそれで終わらず、衣装替えからのベットへ。花の髪飾りをつけた武藤さんは、どちらかというと普段は男前な雰囲気を出しているのに、この髪飾りをつけてドレスを着た武藤さんは、それはそれは綺麗で、綺麗である前に可愛くて可愛くて。たゞ美しいだけでなく可愛いという……。

二回目と四回目はハロウィンをテーマに。ようかい体操第一をフィーチャーした緩い感じと思いきや、盆上にリングを設置して、かっこよくエアリアルを披露する。

三回目は盆で横たわる所から始まる。たゞ無言で動かぬまゝ回る。たゞの人形がぎこちなくも少しずつ動き始めて、動いて、手を伸ばして、立ち上がって、やがて踊り始める。とても美しいステージだ。

四番、鈴木千里嬢。横浜の舞台は狭いけれど、いつになく伸び伸びとして見える。一回目と三回目は黒いフードをかぶって始まる。東洋で何度も見た演目がこゝではまた違って見える。手先の動きは、まるで機械仕掛けのようでありながら、機械ではできない奔放な動き。かっこいゝ。二回目と四回目は初めて見る演目で、白一色のドレスを美しくまとい、それはそれは美しく舞う。尊い。尊いけれど、余りに見るべきポイントが多すぎて、どこを見ていゝのか分からず眺めるばかり。一回や二回では消化できない。

五番、原美織嬢。初見。一回目と四回目は一寸ちゃん。分かりやすい上に展開が早くて楽しい。二回目は桃、桃、桃。確かにみんなの妹はピーチ一色に染められてしまう。これだけでワールドが出来上がっている。三回目は新作らしく、前の二演目とうってかわって渋いステージ。あゝ、いゝ感じ。多彩でいゝ踊り子さんだなあ。

かくして十一時間、背もたれなしで過ごしてやったのであった。


制作・著作/香倉外骨  2021/09/27初出
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