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それはまるで羽ばたく鳥のように

その日の目黒あいらさんは、白一色の和装で登場した。優美に振り袖を広げれば、白銀に縫い込まれた鳥の文様が浮かぶ。これから旅立つ鳥のように伸びやかに。

テンポが上がってターンする。回転。回転。回転しながら帯を外して振り袖を振りほどく。下から白いドレス姿が現れて、ああ、まるで白鳥のように美しくって、いや、白いけれどその様は孔雀くじゃくのように人を魅了する姿見で、ステージ狭しと回る姿はまさに天上の鳥。

そのスケールの大きさに圧倒されながら、ふと、目黒さんに初めて出会った日のことを思い出す。それは五年ほど前の広島第一劇場、この演目とはまた違った和装の美しい演目、それでいて切れ味が鋭くって、美しさと激しさの共存に驚いた。

そうだ、この孔雀は広島が似合う。ここは狭すぎる。広島のように大きな空でないと羽ばたけない。それぐらいのスケールで見るものを圧倒する。

青い衣装、青い羽扇子を背に背負い、ゆるやかに扇ぎながら本舞台から盆へと歩み行く。翼が広がろうとする鼓動を感じる。暗闇の中で青い翼が光る。光り輝く。ああ、うごめいて、もがくように、それでいて優しく綺麗に羽ばたいていく。

最後の片足上げブリッジ、そのまま立ち上がって舞台を去っていく。

素晴らしいステージだった。


制作・著作/香倉外骨  2023/04/30初出
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