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約束

約束を守る最上の方法は、けっして約束しないことだ。ナポレオン

約束を、君は挫けそうでも守ると云った。二人の約束だから。

その約束が、たゞ生きて、生き続けて欲しいと。死なゝいでと、生きることを諦めないでと。

そんな悲しい約束を守るために、君は昨日から新婚旅行に出掛けている。本当はほかにも道が有ったのかも知れない。しかし見えなかった。見えなかったら無かったと思い込んでも仕方ない。仕方ないと思わなければ生きて行けない。

がんばると、がんばれると、つらい目をして云う姿が痛々し過ぎて、余りにがんばり過ぎて押しつぶされそうである故に、そんなにがんばらなくて良いと云いたい。云いたいけれど、君の云うがんばるというのが、生きるという意味であるから、死なずに生き続けると云う意味だから、やっぱり、がんばらなくていゝとは、云えない。

君を失いたくないと思うのは我儘か。もう半ば失ってしまっている物に固執するは我儘か。

情けない。

情けない。

しかれども、

この人生、けっして褒められた生き方ばかりとは云いがたいけれども、

我が人生で、初めての我儘である。

泣いた所で許されないことは分かっているが、これまで云ったこともない。

せめて我儘だけでも云わせて欲しい。

許して欲しい訳じゃない。

たゞ、せめて認めて欲しい。我儘を云うことを。


制作・著作/香倉外骨  2009/04/05初出
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