トップページ | されど我が詩集

首鼠しゅそ

赤く染められた髪が
残り香を残したまま
姿を暗ました

声だけが聞こえる
忍びと思いきや
はっきりと語らうその様に
寧ろ傷愴を覚える

まるでもう二度と姿を見せぬと
高らかに謳うように
颯爽と跡形もなく
ただ雨が

降り続ける雨に腐ってしまおうと
通りすがりの人に踏み荒らされようと
みすぼらしい奴らに悪臭を乗せられても
かの輝きを忘れまい

儚く消え果てるも
かつての心をもって
この身の全て帳消しとなろう

なのに
怒りにも似た苛立ちが沸いている
愛しさにも似た欲望に胸を焦がす
失意にも似た救いを求めている

助けたいと
いつまでも味方であると
云いながら
この身こそ救われたい

髪の一茎を
吐息の一回を
笑顔の傍目を
得たい得たいと希求しながら
失って初めて気付く得がたさ

秋の長雨に
流れされる雫

香倉外骨(2006/09/13)

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制作・著作/香倉外骨  2006/09/13初出
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