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凍える日の夕方
無表情なあなたを
ずっと眺めていた
けして見返されることもなく

笑うことも
頷くことも
哀しむところも
見たことがない
そんなものは持っていないと
信じていた

ただ
触れるだけで
溶けてしまいそうだと
白い白い肌が
零れ落ちてしまいそうだと
眺めていた

けだし
淀んだ空が流す涙であり
精神であり
精液であり

時を経れば
透き通って水の如くなり
流れ去ってしまいそうなほどに
か弱く見えるのに

土足に踏まれて何が痛い
この泥も楽しい思い出

糞便にまみれ何が臭い
この汚れも生きる確かさ

いつでもあなたは
平然と受け止めていた
やがて人知れず瞳を揺らすことを
汚れなどそのままに
雪化粧で押し隠していたことを
知らなかった
或いは誰に
知って欲しかったのだろう

香倉外骨(2007/12/18)

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制作・著作/香倉外骨  2007/12/18初出
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