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ストリップ総括(2021年)

劇場

合計で80回。内訳は:

劇場回数
東洋ショー劇場57回
晃生ショー劇場8回
DX東寺4回
横浜ロック座4回
渋谷道頓堀劇場2回
広島第一劇場1回
まさご座1回
新宿ニューアート1回
川崎ロック座1回
浅草ロック座1回

去年に始まった新型コロナ(COVID-19)の影響で、緊急事態宣言やら何やらで、今年も穏やかならぬ状況が続いている。新型新型と言っている内に旧型になってしまえばいいのに、あえてデルタ株やオミクロン株などと、次々と新型であることを、新型でなければならないことを社会は作り出そうとする。疲弊する精神、業界、しかしファイザーだけはボロ儲け。

そんな中においてもストリップ劇場は今日も懸命に営業を続けてくれている。「今だけは自粛」などと言うことは簡単かも知れない。けれど今だけ自粛の結果として先に何も残らないとしたらその責任は誰が負う。この火を絶やさぬために、この熱情を冷まさぬために、最大限の対策の上で営業を続けなければ。来客が少ないとしても、一度消えてしまった炎は二度と燃え上がることはない。一度止まってしまった鼓動は二度と動き出すことはない。不断の努力の上に、劇場は今日もステージを照らし続けている。

例えば広島が終わった。五月二十日をもって中国地方からストリップがなくなった。ストリップを初めて知った場所、初めて見た出演者は、遠野こころ、永瀬ゆら、秋月穂乃果、香坂ゆかりの四名であった。夙に引退した踊り子も多く、現役は永瀬ゆら嬢ぐらいか。生々流転、世のすべからく諸行無常であるべきといえど、その移ろいの速さに驚かされるとともに、ならばこそ続いていくことの尊さを思う。

六月、シアター上野が八箇月の営業停止処分を受ける。公然猥褻であるという。何が猥褻で何をもって公然であるか。ストリップ劇場という言葉の意味をどう考えるべきか。これはコロナの所為ではなく、ひょっとするとオリンピックの所為かも知れないけれど、コロナは、世の中に当然にあるべきと思っていたものが唐突に禁止されうると我々に突きつけた。例えば健康を理由にタバコが禁止された。コロナを理由に酒が禁止された。

続けようと、守ろうと、そうしなければ続かないと、やがて禁じられてしまう、いつしか消えてしまう。そういうことに気付かされ、恐れおののき、であるからこそ続いてることの尊さを噛みしめる一年であった。

踊り子

合計で399回。なお、劇場への訪問回数(日数)の集計なので、ステージの回数(演目数)ではありません。

踊り子回数
鈴木千里23回
上野綾20回
ゆきな16回
榎本らん15回
大見はるか15回
涼宮ましろ12回
水元ゆうな11回
前田のの11回
椎名ほのか10回
伊東紅蘭9回
坂上友香8回
桜庭うれあ8回
小宮山せりな8回
西園寺瞳8回
川越ゆい8回
木葉ちひろ8回
あらきまい7回
ひなた鈴7回
松本なな7回
中条彩乃7回
夢乃うさぎ7回
ALLIY6回
mico6回
早乙女らぶ6回
椿りんね6回
宇野莉緒5回
工藤リナ5回
佐々木ひなこ5回
真白希実5回
星崎琴音5回
青山ゆい5回
沢村れいか5回
MINAMI4回
ののか4回
須王愛4回
浅葱アゲハ4回
南まゆ4回
虹歩4回
浜崎るり4回
有沢りさ4回
笠木いちか3回
熊野あゆ3回
白石さやか3回
緑アキ3回
KAERA2回
愛あられ2回
宇佐美なつ2回
原美織2回
紗蘭2回
小春2回
川菜ひかる2回
川上奈々美2回
早瀬ありす2回
徳永しおり2回
楓彩2回
蜜マリア2回
友坂麗2回
翼裕香2回
鈴香音色2回
藤川菜緒2回
希望あや/望海あや2回
RiN1回
RISA1回
うららか麗1回
くるる1回
ささきさち1回
みおり舞1回
愛奈1回
葵マコ1回
飴戸ぐみ1回
永瀬ゆら1回
蟹江りん1回
1回
栗鳥巣1回
御幸奈々1回
倖田李梨1回
広瀬あいみ1回
高橋美佳1回
沙羅1回
三村妃1回
山口桃華1回
漆葉さら1回
神崎雪乃1回
水咲カレン1回
瀬能優1回
星愛美1回
星乃結子1回
浅井ひなみ1回
前田あこ1回
丹雫ひよ1回
竹宮あん1回
萩尾のばら1回
武藤つぐみ1回
望月きらら1回
牧瀬茜1回
有馬美里1回
1回
翔田真央1回

今年も鈴木千里さんが一番多かった。例年通り遠征は鈴木千里さんを中心に組み立てたので当然の結果かも知れない。そして今年も東洋をよく見に行ったので、必然として同劇場に出演する方の回数が増えている。

鈴木千里さんには、一月の東洋を皮切りに、十二周年週の横浜、そして新宿、浅草、渋谷、川崎と各所にて見ることができた。その余りに美しくなめらかな動きに、人であることを忘れがちであるけれど、そのふとした瞬間に、ああやっぱり人間だと思わされ、だからこそ人がこれほどに綺麗に舞うことに感動させられる。

そのステージは、体の細さも相まって、まるで重力などないかのように軽やかである。だけど今は、神でも仮想でもなく、この目の前に現に体重を持って存在し、この世に我々と同じ人間として生きていることを知っている。

生きるということは楽しいことばかりじゃない、美しいことばかりじゃない。時に悲しく辛く、人に騙され怒られて、或いは汚く泣きぬれて、生きるために汗をかいては手垢のついた紙幣を握りしめることもある。鈴木千里は美しく軽やかに舞い、美術品のように綺麗に飾られているけれど、確かに人間として生きているのだ。そのことをまざまざと見せつけられて思い違いを正されたように思う。同時に、だからこそ生きている人間がここまで華麗に踊ることに感動するのである。

小宮山せりなさんは、東洋、渋谷、東寺で見ることができた。やはり東寺でみる小宮山さんは一味違う。高さを生かした空中演目は、広島のなくなった今、東寺でしか見ることができないであろう。力強さと可憐さ、そして場内を巻き込んでの盛り上がり。これこそ令和のストリップだと主張する。

夢乃うさぎさんは、丁寧なダンスと独特な表情が魅力的。つまり夢乃さんは可愛い。夢乃さんは色っぽい。そして夢乃さんのステージには夢がある。儚げに見えて芯が強く、自分を持っているからこそまた儚く見える。イベントでの司会でも見事にこなしてその声にもまた触れたい所。

沢村れいかさんを初めて見たのは一昨年の川崎みたいだが、実はそのときの印象は余り残っていない。去年の四月、広島。初の緊急事態宣言が出される直前、がらがらの場内で見たのは鈴木千里さんとのチームショー。どうなるか分からぬ不安な世界で、バカみたいに楽しくて、そして鈴木さんの沢村さんを見つめる姿がひどく優しげで。

東寺で見たソロ演目はまさに全身全霊。それは見事なステージで、魂が叫んでいるようで……圧倒。泣きそうになる。その沢村さんが十一月をもって引退。十年間お疲れさまでした。

引退は寂しい。もちろん寂しいし、もう見ることができないと思うと残念である。しかしそれで残念に思うぐらいならば、現役である内に精一杯に見ておくべき。そんなことは分かっている。分かっているけれど、だからといって限界はあるし、限界を越えたとしてもいつしか引退は来る。中には引退と公言することもなく、いつしか出演しなくなることもある。結局今年一度も出演しなかった目黒あいらさんのように……。

その他、今年も多くの踊り子に出会い、趣向を凝らしたステージを見ることができた。

ステージは一期一会。二度と同じステージはない。だとしても踊り子さんは年中、各地の劇場で踊っている。すべてを見ることは勿論できないけれど、望めばその片鱗を味わうことができる。それは何と恵まれていて幸せなことだろうか。それも皆、そこで踊り続ける踊り子さんのお陰に他ならない。

きっと彼女らは、踊り、踊り続けて、踊りで魅了したいと思い続ける。ならばせめて我々もそれを見て、見続けて、魅了され続けて応援しなければならない。

来年、再来年と、サステナブルな劇場ライフが続くことを。

番外篇

今年はストリップ劇場以外でも踊り子さんの出演するイベントに顔を出してみた。

三月にはファイヤー・ヨーコさんの伝説の技の数々を見ることができ、往年のストリップの雰囲気を垣間見た。凄い技だ。もはや武術演舞を見ている気迫。こういう昭和の空気も嫌いじゃないと思いつつ、今の劇場が如何に洗練され進化してきたかとも思う。

十一月のイベントでは引退した三名が出演するイベントへ。渚あおいさん、北川れんさん、あすかみみさん。もう二度と見ることができないと思っていた彼女らのステージは今も健在で。その間に出会ったステージの数々を心によぎりながらも、その輝きに触れる。引退した今も輝き続けていて、かっこよくて、躍動感に富んでいて。涙が溢れてくる。


制作・著作/香倉外骨  2021/12/31初出
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