トップページ / されど我が詩集

転進

私が前まで座っていた低い台に
天使が優しくほほえみ
私を久しく眺めていた
言葉は無かったし
私自身にも感覚が薄れて行くのが分かった
なぜその人を天使と思ったのだろうか
私は私という当然の事のように
天使以外の言い方は無かった

ただ見ているだけなのに
天使に引かれていくのに気付いた
容姿が美しいからでは無く
共にいると何もしていぬのに心が安らぐ
天使が立ち上がり歩き出すと同時に
失いたく無くなり声を掛けた
ゆっくりとこちらを見たと思った瞬間
意識が薄れて行った

私は草原の中に座り
遠くに見える木々を眺めていた
すでに天使の事は忘れていた
期待という感情を初めて知り
この世の中も悪くは無いと思い
人の道というものを信じた

香倉外骨(1995/11/11)

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