トップページ / されど我が詩集

女神

肌のぬくもりが恋しかった訳じゃなく
人生に悟りを求めた事もなく
ただ当たり前の事だからという理由だけで
僕たちは
傷つけ傷つけられ
ひたすら痛みを生産してきた

人類の歴史は
負の遺産に凝り固まり
守る事の出来ようもない文化財を
やれ守れと言っては
飢えと破壊を辞さず
過去に束縛されて今を見失うなんて

ああ
そうなんだ

この世に処女なんか初めから居なかった
人は産まれながら汚れを背負い
負債を残したまま死んでいく
だから狂気に翻弄された狼どもが
純真な女神を崇拝しては
己の惨めさを認め合う

女神は金では買えなかった
宝石でも名誉でも奴隷でも振り向かなかった
彼女は何も望まない
一つ望みがあるとすれば
愚かな人間どもに無視される事だろう
何も出来ない彼女に
要らぬ期待をすればするほど
彼女が心を痛めるだけなのだ
慰みを求める事こそ
最大の凶器

ラクシュミの像の前に佇みつつ

香倉外骨(2003/06/08)

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