トップページ / されど我が詩集

戦闘機

最近の空は
戦闘機の轟音が充満し
それでも私たちは
世界の安全を守るためと豪語しては
嘘を嘘で塗りながら
黙々と教祖が説法に耳を傾ける

けれどこの世に安全の無い事を
誰よりも知っているのは私たちだ
金では買えない
絶対に得られないからこそ
売りつけ続ける事ができる安全

戦闘機が街を攻撃したら
この地が悲鳴で埋められるのだろうか
いつの日かやってくる最後の時
安全という空虚な言葉に
どれだけの金品を投げ出そうか

戦闘機は
私を殺す
死にながら
この星の未来を思う
けして予想しえぬ未来を
臨終に於いてまで考えるなど
いつまでも愚かな行為ばかりだ

街が血で染まっても
青い空は消えない
窓からガラスが消えても
鳥の声は鳴り続く

そんな分かり切った事実を確認するために
私は苦しみの中を生き続ける
生きるという事は苦しむ事だ
生きるという事は人を苦しめる事だ
痛め合い殺し合い貪り合う
地球に生きる物の定め

一本のロープを天井から垂らして
この輪っかに首を通せば
負の連鎖から逃げ出せる
だけど逃げられない
存在理由を探して飛び続ける戦闘機のように
私はどこまでも低空飛行のまま
君にぶつかるまで進んで行く
「君」なんて
どこにも無いのだけれど

香倉外骨(2003/06/12)

/ 目次 /


制作・著作/香倉外骨  Since 2003/07/26
無断転載を禁じます。 リンクはご自由にどうぞ。
Copyright © 2003 Kagura Gaikotsu. All rights reserved.