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殺意

子供の頃はよく、
死ね、
と思った。
人を殺したいと思った。
事故か何かで死んでくれないかと思った。

子供は残酷だ。

遊んだ友達であったり、
口うるさい家族であったり、
憎らしい大人であったり、
だけど殺意は伝わることなく、
彼らは平然としていた。

いつからだろう、
人に殺意を覚えなくなったのは。
それが大人になるということなのだろうか。
でも大人はもっと残酷だ。

もう僕は、
殺意を覚える程に、
人に関心を持たなくなってしまった。
たゞ我が身のことだけを考えるような、
そんな人間の成体へと為り果てた。

あれこれ悩んで、
他愛ないことに失望して、
自殺まで考えたあの頃。
自分に対して殺意を覚えることは、
それだけ人の痛みも考えられたことだろう。

もう僕は、
自分が痛い思いをするなんて、
考えてもみない。

生き続けるって、
残酷の繰り返しだ。
殺意を棄てゝまで生きる度に、
口先だけの大人になったと痛感する。

たぶん、
この秘めたる思いは本物で、
そして、
途方もない祈りなのかも知れない。
けれど、
叶わぬと思いつゝも、
信じて祈るその愛おしさに、
とても、
死ねないなと思う。

香倉外骨(2004/09/02)

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