トップページ | されど我が詩集

暖房

冬は寒い。
体の芯まで冷気に侵されて、
手は感覚を喪い、
思考だけが熱気を保っている。
寒いのが当たり前だ、冬なのだから。

今が本当に冬なのかと、
根拠のない疑問が顔を出す。
けれど温度計を見て自分を納得させる。
寒いのが、冬なのだから。

だから、
暖房など要らない。
人のぬくもりも、
炎の煌めきも、
目にすればする程に寂しくなるから、
余計に心が冷えるから。

でも温度を覚えるのは体。
この腕を、この脚を、
腹を、胴を、頭を、
全て売ってしまったら、
寒くないのかなあ。

寒いけど、要らない。
寒くなんてないから。

寂しいけど、要らない。
寂しくなんてないから。

愛しいけど、要らない。
愛しくなんてないから。

香倉外骨(2005/12/25)

/ 目次 /


制作・著作/香倉外骨  2005/12/25初出
無断転載を禁じます。リンクはご自由にどうぞ。
Copyright © 2005 Kagura Gaikotsu. All rights reserved.