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夢の始まり

医者になりたいとは
いと高き夢である

可憐な少女にとって
高きを目差す切っかけは何であったか
幼い頃に見惚れたお医者がいたのかも知れない
親の勧めでその職を継ぐのかも知れない
或いは単にドラマの主人公に憧れたのか

始まりは知らねど
おぼこ娘は力強く
医大の難関を制して
確かな一歩を踏み始めた

少なくとも少女には
高きに至る意志と才能があった

けれど走り続ける資金に乏しかった

世間に詰まって諦めるぐらいの夢ならば
始めから生娘のたわごとに外ならぬ
たとい苦しもうと構わぬ
たとい体を売ろうと厭わぬ

少女は
その少女であるを売って資金とする

買って欲望を満たす身が
祈ることも
願うことも
越権の行いであろう

けれど祈ろう
間違いなくやがて将来
医者になるだろう少女に

願わくは
夢の食い物にされぬようにと
夢の始まりを忘れないようにと

香倉外骨(2007/07/16)

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制作・著作/香倉外骨  2007/07/16初出
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