服に染みた硝煙の匂いは
いつしか薄らぐであろう
けれど身に付いた
残忍な獰猛な気配は
どうしても消せない
海の上を歩き
輝く髪をはだけさせ
白い翼を背に負う妖精は
ひどくうつくしみに充ちているのに
潮風に混じって硝煙の残り香が漂って来る
君は
私の最期か
であるならば優しい瞳は
罠か
或いは
思わず懐に手を伸ばし
旧式の拳銃を露わにしては
慣れ親しんだ感触を懐かしむ暇もなく
腕に伝わる反動が何もかも忘れさせる
消音器の情けない銃声だけが耳の中に轟いた
或いは
妖精が赤い血に染まれば
満たされた感情を初めて覚えるのであろうか
消えぬ銃声を消し去るように
耳に銃口を当てゝ
自動小銃に最後の働きを命じた
香倉外骨(2005/05/30)
制作・著作/香倉外骨
2005/05/30初出
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