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墨色の鳥

悪魔に翼を奪われた墨色の鳥を
天使は白い羽で取り繕った
美しく輝かしい翼をはためかせ
みそぼらしい鳥は空へと舞い上がる
もう泳げぬと思った世界へと

鶏の羨む天界の羽
鷹をも凌ぐ威厳の翼

けれどそれを纏った本当の胴体は
姿も力も明らかに劣っていて
強靱な羽ばたきに喘いでいた

疲れを知らぬ淡雪を
いつまでも休むことなく広げて
ぼろぼろになった体を
更に更に太陽へと昇らせる
もう地上へは降りないと決めたかのように

見かねた天使が
悪魔に頼んで
再び翼を奪ってもらった

だけど墨色の鳥は
右翼を奪われながらも
悪魔を返り討ちにする
そして残った左翼で
もがき飛ぶ
飛べない鳥になってもまだ

いつか訪れる青空の向こう側を夢見て
天使の翼は銅から離れて
勝手に昇っていった
両翼を喪った銅だけの鳥は
静かに落ちていく

私は飛ばなくちゃいけないんだ

叫びながら

香倉外骨(2005/06/05)

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制作・著作/香倉外骨  2005/06/05初出
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